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2014年10月31日金曜日

業務連絡 不定期更新での再開のお知らせ

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

この度、しばらく停止していたブログを11月1日から再開することに致しましたことをお知らせ致します。
ただし、更新の頻度につきましては定期更新から不定期更新としますことをご了承下さい。

今月に入って就職活動のため一時停止していたところですが、ご承知の通り博士、しかも安全保障学という極めて特殊な領域を研究している関係から、就職活動は困難を極めており、お恥ずかしながら、このような状態が長期化する見通しが強まってまいりました。

そのため、当方としましては本ブログの継続を断念し、閉鎖を検討していたのですが、更新を停止した後も予想に反して多くの読者にご閲覧を頂き、さらに一部の読者の方々からは継続を願う連絡も頂くことができました。

上述の状況を判断した結果、不定期更新での継続という形が妥当ではないかと考えた次第です。
不定期更新であれば記事を大量に書き溜める必要もなく、柔軟に対応することが可能であるためです。

今後も本ブログを通じて皆様の防衛教養に寄与するところがあれば、そして日本の安全保障の議論をより良いものにすることができればと心より願っております。

今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

KT

2014年10月4日土曜日

論文紹介 戦術能力を評価するための演習とは


今回は、小規模な戦闘で発揮する戦術的な能力を評価することの重要性とその課題について議論した論文を紹介したいと思います。

論文情報
Barclay, C. N. 1975. "Strategy and Tactics: Some Thoughts on the Change of Emphasis," Military Review, 55(May): 40-55.

目次
1.陸上作戦の均衡
2.目的と手段
3.結論

この論文で著者が取り上げているのは第二次世界大戦を戦ったイギリスの陸軍元帥アーチボルド・ウェーヴェル(Lord Archibald Wavell)の説です。

著者によれば、ウェーヴェルは戦略と戦術の切り替えに注意を払う重要性を最初に指摘した一人でした。

1940年から1941年、イギリス軍を指揮するウェーヴェルは北アフリカの戦闘でイタリア軍に対して攻勢作戦を成功させますが、その時の戦力比は非常に不利なもので、およそイタリア軍に対するイギリス軍の人員の規模は1:6の比率に過ぎませんでした。

それにもかかわらずウェーヴェルが攻勢に出る決心を下した理由は戦略上の数的劣勢を挽回するだけの戦術的優位があると判断したためだと著者は指摘しています(ibid: 51)。

しかし、ウェーヴェルの状況は1941年から1942年には逆転することになります。
1942年から北アフリカ戦線ではドイツ軍がイタリア軍の増援として到着したのですが、イギリス軍よりもドイツ軍の戦術が優秀であったためだとされています。

実際、ドイツ軍との一連の戦闘を通じて、ウェーヴェルはイギリス軍の部隊と、ドイツ軍の部隊との間には、戦術的能力という点において重大な格差があることに悩まされました。

特に問題となったのは第一線で部隊を指揮する能力の格差でした。

ドイツ軍は小規模な部隊を運用する小戦術、初等戦術をよく研究していたので上層部が想定していない事態が発生しても現場で利用可能な人員、武器、装備を活用し、的確に戦闘を継続することができましたが、イギリス軍にはこの能力が欠けていたのです。

1943年以降、この教訓を反映させてウェーヴェルは第一線部隊の戦術的能力を向上させる訓練、特に大規模な部隊の運用ではなく、ごく小規模な部隊を運用する初等戦術の訓練を集中的に強化する措置をとりました。

このような経験から、ウェーヴェルが戦略的決心を戦術的領域で実行に移すことの困難を議論したことは、現代の陸軍の教育訓練のあり方を考える上でも重要な意味があると著者は述べています(ibid: 51-52)。

著者の整理によれば、軍事訓練の目的には二種類あります。
第一に武器や装備を操作する戦技能力を向上させる目的があり、第二にそれら武器や装備を任務の達成のために効果的に使用する戦術能力を向上する目的があります(ibid: 53)。

一般に戦技能力を検定や競技会で評価することは困難ではありません。しかし、戦術能力を評価するには演習を実施する必要があります。
「(小部隊の)戦術訓練は恐らく部隊において自覚的かつ良好に教育されているにもかかわらず、大規模な演習に来ると全てが忘れ去られてしまう」(ibid: 54)。 
「部隊は何が起きているかがしばしば分からず、統裁による示威的決定を引き受け、戦術的能力を示す機会はほとんどない。これは非常に重大な問題であり、解決することも難しい」(ibid: 54)。
著者はこのような問題を少しでも解決するためには演習を統裁する方法について再検討することを主張しています。

例えば、統裁要員の移動を容易にするためにオートバイやヘリコプターを使用すること、さらに統裁要員の通信装備を充実させることなどが考えられています。

以上をまとめると、戦術能力が戦略にも影響を及ぼしうる可能性があります。
したがって、戦術能力をより効果的に教育訓練することが重要と成りますが、その教育訓練の成果を適切に評価する演習の方法には課題が残されているということです。

現在の情勢から見れば、世界的にレーザー交戦装置の導入が進められたことで解決された課題も少なくないのですが、費用がかさむという問題があり大規模な部隊が参加する演習で使用することは予算の面から難しいという事情があります。

戦術的能力を向上させる教育訓練の有効性を高めるために、望ましい演習の方法はやはり現在でも重要な問題であるということが言えるのではないでしょうか。

KT