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2015年10月20日火曜日

正しい射撃号令の出し方

戦場で味方の火力を巧みに敵に指向することは、どのような戦術を実施する上でも重要なことです。
第一線に立つ歩兵や戦車の立場から見れば、火力こそが戦闘力の根源であり、それを戦場で効果的に活用する戦術的能力は指揮官に欠かすことはできません。

このことは米軍の教範でも述べられており、具体的には「直接照準射撃及び間接照準射撃によって敵を制圧ないし殺傷することは、近接戦闘において勝利を収めるために必須の要素である」と論じられています(FM 3-21.8: 2-1)

今回は、第一線において正しく射撃号令を出す方法について簡単に説明してみたいと思います。

射撃号令(fire command)は射撃を指示し、統制し、連携させるために使われる号令であり、部隊として何を射つのかを明確にして火力を集中させることを可能にします。

射撃というものを歩兵部隊の指揮官、特に分隊長や小隊長の立場で見てみると、各人の判断によって行う射撃と指揮官の号令によって行う射撃の二つに区別することができます。
戦場で指揮をとる小隊が敵との交戦に入った状況を想定すると、まず応戦のために兵士たちが各人の判断で射撃を開始します。しかし、この応急的な射撃では兵士たちが選定した目標に対してそれぞれ射撃を行うため、小隊の火力が広い目標に向かって分散してしまいます。

したがって、より効果的に小隊の火力を集中させるためには指揮官が状況を判断した上で適切な射撃号令を出さなければなりません。
適切な射撃号令は次の要素から構成されています。

射撃号令の構成要素
・注意喚起(Alert)射手が発令者の号令を受令できるように名前、番号等を呼称する。
・目標位置(Location)発令者は射手に対して目標の方向を指し示す。
・目標説明(Target Description)発令者は目標を特定し、それが複数ある場合には最優先で射撃すべき目標を説明する。
・交戦方法(Method of Engagement)発令者は受令者が目標に対してどのような方法で射撃を行うべきかを指示する。
・弾薬(Ammunition)もし受令者が複数種類の弾薬を持っていれば、どの弾薬を使用すべきかを指示する。
・実施(Execution)発令者は目標が敵であることを再確認した後に、受令者の射撃を実施させる(FM 3-21.8: 2-22)

例えば、「2番(小銃手の注意喚起)、右の丘(2番が注目すべき目標の位置)、前進中の敵散兵2(目標の種類や特徴)、連射(射撃速度の指定)、射て(直ちに射撃を開始する場合には「射て」、発射の時期を統制する場合は「指名」と述べた後、所望の時期に「射て」)」という射撃号令がその一例です。

もし指揮官が部隊の射撃を一時中断させる場合には「射ち方待て」、部隊の射撃を停止させて次の行動に移る際には「射ち方止め」という射撃号令をそれぞれ用います。

これが射撃号令の基礎的事項となりますが、発令者はこの射撃号令を状況の特性に応じてさまざまに使いこなさなければなりません。
例えば、目標の位置を指示する時に指揮官が目印を見つけられない場合には、都計法を使って「11時の方向」と言うこともできますし、指揮官の射撃によって他の兵士に目標を指示するということもできます。

受令者である射手は号令が不明な場合には発令者に対して反復を求めますので、単純明快で理解しやすい射撃号令を心掛けることも重要となります。
射撃号令の出し方が分かると、第一線で兵士たちがどのように戦っているのかを理解する上で役立つのではないでしょうか。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2007. Field Manual 3-21.8: The Infantry Rifle Platoon and Squad, Washington, D.C.: U.S. Department of the Army.

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