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2016年2月14日日曜日

論文紹介 未来の戦場では歩兵分隊が重要となる

基本的に陸軍の組織構造は師団・旅団を基本とし、その下位組織として連隊、大隊、中隊、小隊、分隊が置かれています。しかし、こうした組織構造は絶えず陸軍の歴史の中で見直されており、戦争の様相が変化し続けている現代においても再検討が行われています。
特に米陸軍はアフガニスタン、イラク等の経験を踏まえ、組織の設計を見直すべきという議論が活発に交わされています。

今回は、分隊の役割に注目した研究について取り上げ、その内容を紹介したいと思います。

論文情報
Brown, Robert B. 2011. "The Infantry Squad: Decisive Force Now and in the Future," Military Review, November-December, pp. 2-9.

現代の戦場では分隊員の一人ひとりが重要なプラットフォームである
著者の見解によれば、分隊という部隊が戦場でこれほど重要な役割を担うようになったことはかつてありません。かつて分隊は小隊を構成する一要素という以上の役割を果たすことはめったにありませんでしたが、著者は「われわれは歩兵分隊を決定的戦力の基礎として取り扱わなければならない」と強調しています(Brown 2011: 3)。

分隊の位置付けが変化した背景には数多くの技術革新があります。依然として歩兵分隊の能力は近接戦闘に限られてることは確かですが、ネットワークを活用して他の部隊と絶えず状況認識を共有するようになっており、分隊員の射撃によらずとも、砲兵や航空支援を従来よりもはるかに容易に活用することができるようになりました(Ibid.: 5)。

技術の革新だけではなく、現代の戦場では即席爆発装置や自殺攻撃のような攻撃方法がとられる機会が増加していることも重要な要因です。
著者はこのような脅威に対して米軍は兵士を保護することに多大な努力を費やしており、例えば歩兵戦闘車等のプラットフォームを充実させることに多額の予算を費やしていますが、著者はそのような消極的な措置ばかりでなく、戦いの主導権を獲得することにも着意する必要があり、そのためには兵士一人ひとりを「プラットフォーム」として位置付けることが必要だと述べています(Ibid.: 6)。

将来の戦争に向けて、分隊が保有すべき戦闘能力を再定義すべき時が来ている
著者は陸軍が分隊を一つのシステムと見なし、それが保有すべき戦闘能力を考察していますが、特に偵察能力の重要性について強く改善を要求しています。

著者の言葉を借りれば、分隊には常態的に状況を把握し続けるための「瞬きしない眼」が必要とされています(Ibid.: 7)。
これには分隊が他の部隊からの情報を共有できるネットワークの管理が必要ですが、そのためには中隊の情報支援能力を拡充し、可能な限り現地に近い本部で情報分析ができる態勢を整えなければならないと主張しています(Ibid.: 7-8)。
従来の陸軍の編制だと情報分析のような任務を遂行する部隊が歩兵中隊に置かれることはないため、この組織的欠点が現場での情報共有の妨げになっている側面があるのです。
「われわれは陸軍の歴史において重要な時期に来ている。(中略)もし現在の出来事が将来の紛争を何らかの示唆するのであれば、未来はめまぐるしいものとなるだろう。アイゼンハワーは『賢く、勇ましい人間は、歴史の通り道で横になり、未来という列車に引き殺されるのを待ったりはしない』と言った。今はわれわれが未来を形作る時である。わが歩兵分隊は今や決定的な重要性を持っているのだ」(Ibid.: 9)
終わりに
戦争は常に変わり続けているということを頭で理解していたとしても、実績を持つ完成された組織を未知の形態に変えることには常に費用とリスクが伴います。
しかし、著者が指摘しているとおり、現代の戦場において歩兵分隊の役割は相対的に大きくなっており、情報技術が発達した現代では兵士一人ひとりが全軍の眼となり、耳となって情報を後方の本部に送り、また航空部隊からの情報に基づいて数百メートル先の敵を標定できるようになっていることは重要な変化です。

21世紀の陸軍における歩兵分隊の役割は何かという論点に関してはまだ研究者の間でも定説と呼べるものが固まっていませんが、このような見解が今後の世界各国の陸軍で分隊の編成、武器、装備の設計、戦術や訓練内容に影響を及ぼす可能性は小さくないと思います。

KT

2 件のコメント:

  1. 歩兵の最重要な役割を偵察や攻撃効果判定とするならば、無人機などで代替可能であるようにも思われます。分隊やそれに準じた部隊は重要なのかもしれませんが、人間である必要は全くないのでしょうか。

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    1. コメントありがとうございます。おっしゃる通り、そもそも現在の戦場での活動をもっと無人化できないのかということは議論がされていますし、特に偵察斥候のような任務は無人化の努力があってよいと思います。実際、研究者も巻き込んで軍用ロボット開発の試行錯誤が行われていることはご承知のことと思います。
      恐らく課題となっているのは、組織内部の保守的な考え方、あらゆる地形、あらゆる気象、あらゆる敵情に対する適応性の確保が技術的に難しいこと、電子戦で無人機が一挙に制御不可能になるリスク、あと研究開発費の問題等があるのだと思います。私自身勉強不足なところがあるので断定できないのですが、当面のうちは依然として人間が第一線に立って戦う必要があり続けるのではないかと推察いたします。

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